|
Hokkaido Forest Products Research Institute
|
||||||
木質系材料と住宅(その1)性能部構造性能科 研究職員 小林 裕昇
はじめに
住宅は昔から人々の生活の中心であり,その生活の場の周りにある,手に入りやすい材料で造られました。そして日本人は,最も身近にあった木で住居を造り,住んでいたのです。しかし「火事は江戸の華」と言われたように,江戸は何度も大火に見舞われました。第二次世界大戦では空襲の焼夷弾により,木造の建築に大きな被害が出ました。このような火災に対する木造建築物の弱さが,木の建物は弱いという間違った固定観念を生み,鉄筋コンクリート造や鉄骨造の方が安全であると思われるようになっていきました。そして平成7年に起きた阪神・淡路大震災が決定打となり,「やっぱり木造は火災や地震に弱いもの」と言われるようになってしまったのです。その後,各研究機関により「木造は弱くはない」ことが実験で明らかにされていますが,一般にこれだけ広まってしまった木造への不信感はなかなか消えないものであります。 本当に木造住宅は強いのでしょうか?弱いのでしょうか?どちらなのでしょう。
建築材料としての木材
引張り強さをスギ(木材),コンクリート,鋼鉄で見てみると,鉄がぬき出て強いのが分かります。二番手は意外にもスギであり,コンクリートが三つの中で一番弱いということになります(引張力に弱いコンクリートは,引張力に一番強い鉄(鉄筋)を入れることによって頑丈な構造物となります)。鉄の引張り強さは「5000」,木は「900」で,約5.6倍の違いがあります。これだけを取り上げると,とにかく鉄は強いという結論になってしまうでしょう。
単位重量当たりの強度は比強度と呼ばれるもので,材料の強度を比重で割った値のことです。鋼鉄の比重は7.8,スギ(木材)の比重は0.35ですので,引張力の比強度は鋼鉄641kgf/cm2,スギ(木材)2571kgf/cm2となります。この値から考えると,外から加わる力に同じように耐える建物を設計する場合,木造の建物では自重を軽くすることが可能となります。
建物の自重が軽くなることによるメリットは,
工業製品としての木材
合板は丸太をかつらむきの要領でくるくる回転させ単板を削り出し,その単板を繊維方向にそれぞれ直交させて奇数枚接着させたものです。単板を積層させることで,湿度による木の伸び縮みの欠点や方向による強度の違いを解消します。また自然素材のままでは得られない大きい板も製造が可能です。しかし合板は丸太をかつらむきにして作るため,原材料には太くて丸い形の良い丸太が求められます。つまり原材料を選ぶことになるのです。
![]() 写真3:パーティクルボード
パーティクルボードは,切削または破砕された木材の小片に合成樹脂接着剤を塗布し,熱圧成型した比較的厚い板材で,建築用というよりは家具や建具の心材としての用途に多く用いられています。製造上,原料のチップ(削片)の方向がバラバラなため合板より強度が低いのが難点ですが,原料に合板工場の残材や建築の解体材,小径木などが使えるのが強みです。
![]() 写真4:OSB もう一つ繊維板(ファイバーボード)という製品があります。木材のチップを蒸煮,解繊して合成樹脂接着剤を加えて成型した製品ですが,これはまたの機会にお話したいと思います。
近年木造建築の復権ということなのでしょうか,公共建築物が大断面構造用集成材(写真5,6)を用いて建てられるケースが増えています。集成材は厚さ2〜4cm程度の挽板(ラミナ)の繊維方向を平行にそろえて,積層方向に圧力をかけながら集成・接着したもので,構造用集成材と造作用集成材に分けられます。住宅では,敷居や長押に化粧用単板を貼った造作用集成材が古くから使われていましたが,構造用集成材は「のりで貼った木は木ではない」と敬遠された時代もありました。
構造用集成材は1950年代から,主に学校や体育館などの施設に使われていました。しかし,それ以上の規模の建物に使用するには建築基準法が整備されていなかったため,少しづつ使用量が減っていきました。その後,アメリカとの林産物協議による大断面集成材の使用拡大のための法改正と,円高により海外から安い構造用集成材が大量に輸入されたことがきっかけとなり,再び需要が伸びるようになったのです。(写真6、7)
集成材は工業製品であるため,素材より大きな断面と長さのものを自由に作ることが可能です。また製材と比較して,しっかり乾燥されているので安定した寸法精度を持ち,伸び縮み,曲がりや捻れ,割れが無いこと,強度等級により構造設計用の数値が示されていることから,現在では需要が大幅に伸びてきています。また構造用集成材というと,大型木造建築にしか使われていないと思われがちですが,木造住宅の軸組に集成材を積極的に取り入れるメーカーも多くなりました。
参考文献 |
||||||
| Hokkaido Forest Products Research Institute |